笠嶋所長の音楽療法色々

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その1１
　少し日にちがあいてしまいました。
詩人君は一歩一歩苦難とともに一人前になる道を歩んでいます。
身体障害者施設とは、どんな施設かご存知でしょうか。年齢がだいたい65歳以前の方が多く、中途障害の方が多い、つまり交通事故とか、脳血管障害のため、お体が不自由になられリハビリテイションの後にこの施設に入られます。

結構、勤務がきつい所と認識しています。
音楽療法以前の入居者とどう上手くやっていくは大変な課題だろうと思われます。その理由の一つに、頭脳明晰で「辛さ」が前面に出ている方が多くいる。ということです。

まあたとえは悪いのですが、「口のうるさい姑」のような方が多いと思えばいいのかな。「音楽療法は心理療法です。」したがって彼らの心持を理解し、洞察ができなくては」いけません。

ここに音楽療法の勉強するべく理論の一つが明白になります。つまり中途で断念をしなければいけなくなった方の「心理」を理解しないお友達も、セラピーも存在できないのです。

その1２
　音楽が出来るとこと音楽療法が出来ることとは話しが違います。

ここのところ多くの方から、自分は音楽はプロですが。といわれる方から相談をうけることがよくあります。

その時に説明して理解しやすいのは、「治療のためのお薬が多くないと沢山の人と関わるのが難しい」ということです。

なんでもできるプロはいません。

しかし、音楽療法は対象者の方に合わせるのが始めのやり方（同質の原理といいます）になります。したがって広く浅い知識と技術が必要になります。音楽そのものが目標ではありません。

プロの演奏は多くは「自分の上手な演奏を聞いてもらう」というのが原点になります。勿論そのような場合もあります。

しかしその時相手の方がおろそかになってはいけません。

「観察と参加」が必要です。そこが難しいところです。

その1３

詩人くんの修行はどうなったでしょうか。

彼が私の学院に入学して、3年がたとうとしています。

詩人くんはいつも悩みます。

そしてそれは音楽療法を学ぶ人にとってはとても大切なことです。

自分のしている活動は対象者にとってどのような意味があるかのかを考えています。しかし意味が見出せない時もあるのです。

そこに音楽教育とは違う面があります。

私も長い間、考えたことでした。

対象者に変化が生じない場合　意味はあるのでしょうか。

ということです。

詩人君のセッションでも、難しい場面に接していました。

音楽は拒否するが、詩人君は受け入れているという状況が起こりました。

しかし、セラピーという原点にそって　考えるとそれは有りなのです。

それを理論として現わしたのが　「エヴァン　ルード」という人です。

私はその理論で詩人君を指導しました。

そして彼はそれをのりきりました。

12月5日にその報告を日本音楽療法学会関東支部埼玉大会で発表します。「良く頑張った詩人君」でした。

平成16年11月　20日　　秋晴れの日に

その１４

詩人君の報告より

詩人君は学会で発表しましたが、その事でずいぶん勉強できたと報告していました。

自分のことを文章にする、あるいは発表するのは、本当に良い勉強となります。

さてその結果詩人君はクライエントの主治医にご指導を受けることが可能になり

その先生の研究会に参加させて頂けるようにもなりました。

これは学徒としては大進歩です。

それも論文を書いたお陰です。指導した私も鼻が高いというものです。

「その上お酒も飲ましてくれた」とか言ってとても嬉しそうでした。

ちなみに私は学生とは食事も飲会もしません。そのような時も先生の立場ではとても辛いので・・・ゴメン

その１５

詩人君は、音楽の友社出版の「ミュージックセラピー」にて一年間に渡って3回シリーズで紹介されました。　　私の勤務先の東京国際音楽療法専門学院のページです。

他の所（大学、専門学校）などとは少し赴きが異なる内容かと思いますが、興味のある方は是非購入の上、読んでみてください。（ちなみに，私の著作の編集して下さった、芹沢一美さんが編集長）

音楽療法がしんどい学問であり、いかに一人前になる為には苦労と学問と音楽修行が必要かご理解頂けると思います。

その上詩人君はまたもや「自分がした事は何だったのか」という「？」苦悩にとらわれています。

しかしその事は　「人間とは」「生きるとは」というより深い思いにと及んだのだと思います。

そして良くないのは、「だから自分がしたのは、意味があったのか」という考えです。

私は彼に「重度の方のセッションは、セラピスト自身の　心の宝石の構築なのだ」だから自分をもっと大切に，自分をいじめないようにと指導しました。

その１６

音楽療法は相互交流です。

一方的に指導するのでも、教授するものではありません。

このことは勉強しだすと、すぐに色々な先生から、教わるのですが、実際現場に立つと中々うまくいきません。

言語交流でも、お話しを聞いて　応えて　交流がはかられますよね。

しかしコンサートでは、「聞いて下さい」です。だから演奏内容には気を使い、十分練習をして、最高の演奏を提供します。

では、音楽療法の技術は何でしょうか。

分りやすく説明すると　100円というお金を　セラピスト　とクライエントが両方で分け合って出し、100円にするというやり方です。だから対象者がいくら持っているかが分らないとこちらがいくら出せばよいか、計算できません。

その技術は、観察の力により養われます。

だから感性がセラピストには要求されます。音楽能力もさることながら「対象者を知り、観察する」のです。

大変ですよね。

その１７

音楽療法の理解してもらうのに、文章を作りました。
「音楽療法のお話し」と題しました。

音楽をするのは比較的簡単ですが、その理屈を文章化するのはとても大変です。音楽療法は科学性、客観性を求められるのです。

つまり音楽を科学します。

だからそれを「治療」とすると、途方もない理論の裏づけが必要になります。

したがって、音楽療法を文章で理解するのは大変です。

関心のある方が理解できるように分りやすく文をつくりました。

もし読んでみようと思われる方は研究所のホームページまでご一報下さい。

平成17年　7月30日　　ようやく元気になりました。でも頑張らない笠嶋さんです。

その１８

音楽療法の資格があれば、仕事になると思う人が多いです。

勉強あるいは、入学希望の際に「就職出来ますか？」という質問をよく聞きます。

音楽療法が世の人々に理解され、希望される方々に施行できるには、なんらかの世間的約束があるべきでしょう。それが国家資格というものでしょうか。

しかし　「就職ができるかどうかでこの道を選択する」というのにどうも私は抵抗があります。

実際セッションを始めて、つらい思いで、今を生きている方が思わず「笑顔」になるのを間のあたりにすると、お金では得られない「幸せ」を頂きます。

そういう価値はセラピストの生きるもとに繋がるのと思うのです。

だからあまり計算せずに実践を始めたらいかがでしょうか。

「分らなければ、勉強　研究する」　

国家資格が実現しない今こそできる方法です。

国家資格になれば、育成機関の卒業生が資格を習得するのですから。

その１９

音楽療法を勉強するのに、音大卒とそうでない人がいます。

音楽を使うのが仕事ですので、音楽ができないとセラピストにはなれません。

よく「音楽が出来ないのですが、音楽療法士になれますか」という質問を受けることがあります。

しかしいつも「あまりすすめられない」と答えます。

しかし、心理士　医師の分野の方が資格をとっておられることもあります。

それぞれ特徴があり、それぞれの得意技術で研究されていますが、これから音楽療法士として仕事をする場合は、音楽技術はとても大切です。しかも広範囲に必要です。

なにの勉強よりも優先して音楽の広いジャンルを体験されることをお勧めします。

音楽大学は演奏家と教育者を育てていることが多いのですが、音楽療法分野ではそれでは追いつきません。だからもっと深める必要があります。

そうでない人で今まで、好きで音楽をしていた方は基本的理論の勉強と技術の習得が必要です。

対象者の方々に対応する為には対象者の数だけ音楽の種類が必要と思うと良いでしょう。

一般的には地区の公民館に足しげく通ってサークルに入れてもらい、体験するのが易くものにする方法です。難しい訳ではありませんが、努力が必要です。

　　平成17年10月13日　例年のごとく忙しく過ごしている笠嶋です。　　川越にて

その２０

音楽療法の学習で難しいのは何でしょうか。

大きく分けると　

①　音楽の勉強

②　対象者を理解する勉強

③　セッションを進行する力

④　科学的に証明する勉強

となりますが、どれも大変です。

①の音楽の勉強では、基本的な音楽理論に加えて対象者に合わせる音楽の広い演奏能力と、音楽そのものを、よく知る能力が必要です。

　音楽大学ではクラッシックなものを勉強するのですが、それも音楽の　一部ということになります。

　実際の現場では、民謡、演歌、ポップス、明治時代の歌唱曲、フォークソング、軍歌など、歌唱曲だけでもこんなジャンルがあります。しかも成人、児童などにより　また違いがでてきます。

　音楽以前の、音そのものもあり、そのためには、様々な音色も必要です。

これは、実際では、対象者に合ってから勉強するのも多いということになります。

その他　作曲　編曲　転調　の力を、対象者に合わせて行う能力も必要です。

大変ですよね。

本当に音楽が心底好きでないと、できない仕事です。

しかも一番大変なのは、その場に合わせて行う即興の力です。

即興性と即興演奏はまた違いがあります。そしてどちらも必要です。

本日はここまで。

平成１７年１１月２４日　　　川越にて。

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